【新卒向け】エントリーシートの思考法|就活生の顔が見える文章とは

エントリーシートの作成でよく見る”具体的に書きましょう”というアドバイス。

「具体的ってどういうこと?」
「数字も例も入れて具体的に書いてるつもりなんだけどな…」

と、混乱している方も多いのではないでしょうか?

具体的に書くという言葉はシンプルですが、その本質を理解できていないと、
内容がなかなか上手く伝わらず、面接まで進めない原因にもなり得ます。

 一方で、ここを正しく押さえられると、
仕事を始めた後に活かせる“考え方”を身につけられます。

そこでこの記事では、“就活生の顔が見える”エントリーシートを目指し、
具体性の高め方と、志望動機・自己PR・ガクチカの3つの項目に合わせた書き方を解説します。

書き方に迷っている方はもちろん、既に出来上がった!という方も
振り返りのためにぜひ参考にしてください。

目次

エントリーシートの失敗例|新卒就活でよくある誤った具体性の出し方

まずはエントリーシートを書く上で最も重要なポイント「具体的に書く」

就活が上手くいかない多くの学生のエントリーシートは、
ビジネスマンからすると全く具体的に書かれていないのです。

そこで、読み手となる担当者が想像できるように書くのが重要。

この章ではそのためにはどう書けばいいのか、
その考え方を失敗例を交えて最初に説明しておきます。

具体的の意味|数字を入れるだけでは不十分な理由

エントリーシートを書く際に、数字を入れて具体的に記載しよう、
という説明をよく見かけます。確かに数字が入れば、説明がより具体的になります。

しかし、それは枝葉末節的なアドバイス。数字を入れるだけでは意味を成しません。
少し例を見てみましょう。

私は飲食店で接客のアルバイトを3年間継続して参りました。ピークタイムのお昼時には、1時間で50人を超えるお客様を接客スタッフ5人で回転させなければなりませんでした。
そのためアルバイトみんなで協力し効率的に対応し、危機を乗り越えました。

…これを見て、読者のあなたはどう感じますか?

確かに数字を具体的に入れることで、わかりやすくしようという気概は感じます。

しかし、この文章からは飲食店の規模もわからなければ、
5人で1時間で50人を接客するのがどのくらい大変なのかも分かりません。

そもそも接客スタッフとしてどのような仕事をしているのかも、
何をどう効率的に対応したのかという中身も伝わってきません。

もちろん、数字や具体例は有効な材料です。

しかし、それだけで具体性が生まれるわけではないということを
まずは理解しておきましょう。

訴求ポイントと内容|一番に言いたいことは何?を意識する

文章を書く際には、その文の中で一番言いたいことは何なのか
を明確にしなくてはなりません。

それが明確になっていないと主張がぼやけてしまいます。

先の事例でいうと、一文目は「3年間継続してきた」ことが書かれています。

これだけ見ると、主張したいのは「忍耐力」や「継続力」、
「まじめさ」や「プロ意識」などかな?と感じさせます。

しかし、その後に記載されている内容は「忙しさ」や「効率重視」、
「協調性」などに関わる内容で一文目とズレがありますよね。

このように、短い文章の中で異なった主張をしていると文字数も嵩み、
主張がわからなくなってしまうのです。

この場合、後の文の方が言いたいことが詰まっているので、
一文目を消して主張したい内容を説明する一文に差し替えるのが得策です。

新卒の就活に成果は不要|企業の求めるものとズレる「成果」

企業側も当然、学生に対して求めるものがあります。企業によってそれは異なりますが、
多くの場合、学生にすごい「成果」や「実績」は求めていません。

なぜなら、新卒社員は「育てる」ものであって、実力を買って採用する
「即戦力ではない」からです。

しかし、多くの就活生が成果を語ろうとしてしまうのも事実。

もちろん、実績があるにこしたことはありません。

ただ、多くの企業が求めているのは一握りの超優秀な学生ではなく、
泥臭くても頑張れる一般的な学生です。

実績よりも、どのように頑張ったのか、それが企業が本当に知りたいことなのです。

次章では、さらに企業が何を求めているのか、その解像度を高めていきます。

企業が求めるエントリーシート|読み手に想像させるためのポイント

では次に、どういった書き方をしていけば具体性が高まっていくのかを解説します。

ポイントは企業側の視点として、どこを見れば就活生の事がわかるのか、
を考えてみることにあります。

そもそも「仕事」とは何なのか。この章ではそこを切り口に紐解いてみましょう。

企業が社員に本当に求めるもの|仕事とは何なのかを確認してみよう

企業が社員に求めるのは、単に作業をこなすことではありません。
仕事の最も大きな目的は「売上を上げること」にあります。

薬局でいえば、薬を棚から取り出して患者へ説明し渡すことで売上が生まれます。
これは企業の活動を支える“中心の行動”といえます。

しかし、現場を運営する上では、それ以外にも在庫管理、調剤室や待合室の導線設計、
医師との連携など、直接売上には結びつかなくても欠かせない業務が多く存在します。

つまり、仕事とは売上を生むために
「その場を作るための業務すべてを考えて行うこと」
なのです。

この前提を押さえておくと、
企業がエントリーシートで“何を見ているのか”がより明確になります。

仕事は課題の解決|経験から見える仕事力

どんな仕事であっても何らかの課題解決を行うという点は共通しています。
課題を解決するには、以下の一連の流れがあります。

課題抽出→原因究明→対応検討→実行→解決

「PDCAを回す」という言葉がありますが、
それは検討と実行の間を行き来して改善を図ろうというもの。

つまり、今は学生のあなたも仕事を始めると、
この流れを意識して仕事を進めることが求められます。

逆に言えば、その思考の流れを自分の言葉で再現して伝えることが
就活では求められているというわけです。

エントリーシートでも面接でも、経験した内容そのものはそれほど重要ではなく、
その経験を通してこの流れが意識できていることを伝えていくことになります。

具体化のポイント|思考と行動が見えること

ここまでを踏まえ、ではエントリーシートに書く際にはどのように書けばよいのか、
に話を戻します。

ポイントは経験の中で”あなた”の「思考」と「行動」が見えるように書くことです。

先に示した、
「飲食店で少ない人数で沢山のお客さんに対応しなければならなかった。
そのために効率化を図った。」

という例であれば、何を改善すれば効率化できると考えたのか(思考)
そしてどのように実行(行動)して、その結果どうだったのかを説明すべきなのです。

例えば以下のような要領です:

・チームが上手く機能していなかったと考えて、仲良くなるために一人一人とどうするかを話し合った
・テーブルごとに担当分けしていたが、業務ごとに担当分けするようにした
などなど。

誰かに任せられた業務を、そのまま行った経験だけでは、
「この人がどのように考えて動くのか」を読み取ることはできません。

「こう動く人なんだろうな」と自然に想像できる。
そんな一文こそが、“具体的に書けている”エントリーシートと言えるでしょう。

志望動機・自己PR・ガクチカの特徴と落とし込み方|エントリーシートの3つの項目

ここまでで、エントリーシートの“具体的な書き方”の基本構造を整理してきました。
次は、いよいよ実際の設問に落とし込んでいきましょう。

新卒採用のエントリーシートでは、
多くの場合「志望動機」「自己PR」「学生時代に力を入れたこと(ガクチカ)」
の3つが軸になります。

この3つはいずれも、あなたの“働く姿”を想像させるためのものですが、
それぞれの目的と視点は少しずつ異なります。

この章では、それぞれの項目がどのような意図で問われているのか、
そしてどのように“具体性”を意識して書けば伝わるのかを整理していきます。

志望動機|「なぜ」より大事な「どのように関わりたいか」

志望動機は、「なぜその業界・その会社を志望するのか」を問う設問です。

しかし、そこで大切なのは「なぜ興味を持ったか」ではなく、
その経験から何を感じ、どのように関わりたいと思ったのかという“意志の方向”です。

多くの学生は「○○に興味がある」「御社の理念に共感した」といった
“動機のきっかけ”で止まってしまいがちです。

しかし、企業が知りたいのは、
その興味を仕事にどう活かすのかという「接続の筋道」です。

志望動機を構築するときは、次の流れで整理してみましょう。

経験 → 課題への気づき → そこから生まれた「やりたいこと」 → その実現に会社がどう関わるか

この構成にすると、単なる「入りたい理由」ではなく、
自分の思考と行動の延長としての志望を描くことができます。

その結果、「この会社でならこの人が活躍しそうだ」と
具体的に想像させることができます。

自己PR|行動の特性と経験量の“二軸”で伝える

自己PRは、あなたが「どのように動く人か」を伝える設問です。
ここで大切なのは、行動の特性を明確にし、その特性がどれだけ磨かれているかを示すこと。

たとえば、あなたが「相手に合わせて伝え方を変えることが得意」だとします。
これは行動の“特性”です。

また、「接客のアルバイトで3年間、毎日50人以上のお客様に対応してきた」など、スキルとしてどれほど磨かれているのか、という経験の量を加えると文章の説得力が一気に高まります。

ここまで解説してきた通り、企業は“経験の大きさ”ではなく、
“そこから得たスキルを仕事で再現できるか”を見ています。

そこで、以下の二軸が成り立ちます。

行動特性(どんな動きをする人か) × 経験量(どれだけそれを積み重ねてきたか)

これを意識して書くことで、あなたの強みが単なる印象ではなく、
仕事に結びつくスキルとして伝わる自己PRになります。

ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)|経験から考え方と行動を伝える

ガクチカは、「学生がどのように考えて行動してきたのか」を確認するための設問です。

ここでは“成果”をアピールするのではなく、課題への取り組み方に焦点を当てましょう。

先ほどの流れを思い出してください。

課題抽出 → 原因究明 → 対応検討 → 実行 → 改善

この流れに沿って書くことで、
読み手は「この人は仕事でも同じように考えて動けそうだ」とイメージできます。

つまり、ガクチカとは経験談を通して“働く思考の型”を見せる設問なのです。

数字や成果は補足として添える程度で構いません。
一番伝えるべきは、課題を前にしたときにあなたがどんな思考をしたのかという点です。

どんな経験であっても、必ず「うまくいかなかったこと」や
「工夫が必要だった場面」があるはず。

そこに焦点を当てることで、あなたの思考の流れや行動の特徴を伝えるようにしましょう。

ここまでで、エントリーシートの3つの主要項目が、それぞれ異なる目的を持ちながらも、
すべて“あなたの思考と行動”を読み取るためのものだということを整理しました。

次の章では、これまでの考え方を踏まえて、
実際にどう修正すれば文章が具体的になるのかを、事例を交えて確認していきましょう。

エントリーシートの具体化|事例でわかる文章の深め方

ここまで、「具体的に書く」というポイントを軸に、エントリーシートの深め方を解説してきました。これを踏まえて、実際にどうすればよいのか例を見て理解していきましょう。

思考と行動の解像度を高める|読み手と自分との認識の差を埋める

まずは以下の3つの文を見てみましょう。

英語が苦手だったので、単語帳をひたすら行いました。単語を覚えたことで文章が読めるようになっただけでなく、リスニング力も向上しました。その結果、TOEICで目標としていた点数を取ることができました。

英語が苦手だったので、毎日単語帳を2時間行いました。最初はなかなか覚えられませんでしたが、何回も復習するうちに頭の中に自然と単語が浮かぶようになり、3か月経過する頃には1000語以上語彙力が増えました。
またその結果、TOEICでは目標としていた750点を超えることができました。

英語が苦手だったため、まずは単語力を高める必要があると考えました。そこで、単語帳を毎日10ページ分、3週しました。1週目は単語の意味確認、2週目は状況をイメージしながら例文を読み、3週目は声に出して例文を読む。これを繰り返しながら毎日10ページずつ追加していくことで、3か月後にはTOEICで300点アップに繋がりました。

Lv1では、数字もなく単語帳をどのくらいやったのかも何もわかりませんね。
Lv2では、数字で記載されて目標達成ができたことも分かります。
Lv3では、さらにどうやって単語帳をやっていたのかが詳細に記載されています。

Lv2とLv3の違いは、Lv2では「毎日2時間やった」と時間を書いているのに対し、
Lv3では時間ではなく行動の内容が書かれている点。

これにより、あなたがどのように考えて、どのように行動をしたのかが読み手に伝わります。

このように、エントリーシートで具体性を出すとは、数字を書くことではなく、
思考と行動の解像度を上げて、書き手と読み手の認識の差を埋めることなのです。

これができていると、面接官側の負担を減らすことができるだけでなく、
読み手側としても面接でさらに理解を深める質問を投げやすくなるのです。

目的に応じて文章を調整する|同じ経験事例を項目によって使い分ける

では次に以下の事例を見てみましょう。

<事例>

・実務実習でたくさん薬が余ってるという患者に出会った。
・患者は10種類以上の薬を飲んでおり、一種類を除いて全部食後なので、
 食前の薬を飲み忘れてしまっていた。(状況)
・残薬を調整するだけではなく、別の機序の薬に変えることを検討してはどうかと思った。(思考)
・そこで薬剤師に相談し、違う薬を試してみることを提案。医師に服薬情報提供の機会を貰った。 (行動)
・それまでは薬の効果にばかり注目しがちだったが、
 飲み方などの性質が治療に大きく影響することを知った。(学び)

この事例に関して以下の3つの文を見てみましょう。

 
志望動機

実務実習で、残薬が多い患者さんに出会いました。原因を探ると、一種類だけ他の薬と
服用タイミングが異なることが、飲み忘れの要因になっていました。
この経験から、薬の効果だけでなく“使いやすさ”や“生活への適合性”が、治療継続に大きく
影響することを実感しました。私は研究職として、臨床現場で得たこうした視点をもとに、患者の生活を起点にした設計思想を研究に反映し、より使いやすい薬の創出に寄与したいと考えています。
そのため、○○の領域で多くの製品を展開している貴社の研究体制の中で、その実現を追求したいと思います。

 
自己PR

私の強みは、課題を見つけ出し、根本から解決策を考え抜く探求心です。実務実習では残薬が多い患者に対し、
単なる残薬調整ではなく、なぜ余っているのかを生活リズムや薬の性質から分析しました。
以後も処方を見直すたびに
「どこで問題が生じそうか」を考え、薬の使われ方を調べる習慣を続けています。問題を構造的に捉え、解決に向けて行動を継続する姿勢を、研究職として新しい価値を創出する際にも活かしたいと考えています。

 
ガクチカ

実務実習で、多くの薬が余っている患者さんに出会いました。
最初は単に「飲み忘れが多い」と考えました。

しかし、話を聞いて、10種類以上の薬を全て食後に服用していたため、食前の薬が飲み忘れに繋がっていたことに気づきました。
原因を整理し、薬剤師の先生に相談して別の薬を提案する方法を検討し、
医師へ情報提供する機会を
いただきました。
以後は、処方せんを見るたびに「どこで問題が起きそうか」を意識し、類似症例を調べて
改善策を
考えるなど、患者に合った治療を実現するための分析と提案に力を入れました。

今回は、やや専門的な事例ではありますが、
製薬企業の研究職の就活で実務実習の経験を題材にする想定の事例を記載しました。

同じ経験でも、

・志望動機では「方向性」
・自己PRでは「特性」
・ガクチカでは「過程」

といったように、使う項目によって言い回しや魅せ方を整えることで、
目的に応じた書き分けが可能です。

“何を書くか”よりも“どんな目的で書くか”——

エントリーシートを磨くうえでは、それを意識することが最も重要なのです。

まとめ|“具体的に書く”は、社会で活きる力になる

ここまで、エントリーシートを「具体的に書く」とはどういうことかを整理してきました。
最後にもう一度、ポイントを振り返っておきましょう。

ここまでのまとめ|ESで意識すべきポイント

今回の記事のポイントは以下の通りです。

この5つを意識できていれば、エントリーシートは確実に一段上の完成度に近づきます。

・数字を入れることが“具体的”ではない。大切なのは、思考と行動の内容を見せること。
・企業が知りたいのは成果ではなく、「課題にどう向き合い、どう動く人なのか」。
・仕事とは、課題抽出から改善までを考え抜くプロセスの連続である。
・志望動機・自己PR・ガクチカにはそれぞれ目的があり、意識すべき焦点が異なる。
 (志望動機=方向性/自己PR=特性/ガクチカ=過程)
・同じ経験でも、目的に合わせて見せ方を変えることで、伝わり方が大きく変わる。

“具体的に書く”ことの本質|就活を超えた先に生きる文章作成力

「具体的に書ける」というのは、単に就活テクニックではありません。
それは、自分の考えを整理し、相手に伝わるように構造化する力です。

社会に出ると、報告・相談・提案など、言葉で考えを共有する機会が増えます。
そのときに問われるのは、まさに“具体的に伝える力”

つまり、エントリーシートで培ったこのスキルは、
社会人としての説明力・思考力の基礎になります。

エントリーシートを「選考書類」としてではなく、
“自分の思考を見える形にする訓練”として捉えてみましょう。

その積み重ねこそが、“あなたという就活生の顔が見える文章”につながっていきます。

今後の発信について

今回は、エントリーシートを具体的に書くための考え方と実践法を整理しました。
次回は、面接を踏まえたエントリーシート設計についても発信していく予定です。

書類で伝わる内容を、面接の場でどう“生きた言葉”として表現するか。
そのつながりを意識することで、就活全体の完成度はさらに高まります。

引き続き、ひとつ上の伝え方を一緒に磨いていきましょう。

薬学生としてのバックグラウンドを就活に活かしたいなら、
以下の記事にその方法を記載しています。

エントリーシートのテーマの考え方として、参考にしてみてください▼

>『Formulø』—それは次世代の薬剤師たちに向けた キャリアの処方箋

『Formulø』—それは次世代の薬剤師たちに向けた キャリアの処方箋

由来となったのは、薬学において処方のエッセンスを意味する『Formula』という言葉。 コロナ禍で急速に進んだオンライン化、AIをはじめ、日々進歩するテクノロジーの数々。社会全体が目まぐるしく変化する中で、薬剤師もまた、これまでと同じではいられない。 そんな時代だ。未来の薬剤師を目指す学生や若手薬剤師たちが、見えない将来に不安を感じるのも無理はない。 ーこれから薬剤師を目指すのは間違い?薬学部を目指すのはやめた方がいい? ー薬学部に入ったけど、この先どう進めばいい? ー薬剤師になったけど、将来に希望はあるのか? そんな不安な時代だからこそ、今こそ”処方箋”が必要だ。 『Formulø』は、そんなあなたの疑問に答えるメディア。 現場で働く薬剤師のリアルな声と、これからの薬剤師像を、一緒に見つけていかないか?

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