薬学部の強みを生かすエントリーシート|背景と自分の軸の見つめ方

就活の最初の関門として訪れるエントリーシート(ES)。
「何を書けばいいのかわからない」
「頑張って書いているのに、面接まで進めない」
そんな焦りを感じていませんか?

特に薬学部は、実習・研究室・国家試験の勉強と忙しい日々。
他学部と比べると、どうしても“就活の時間”が取りづらい環境です。

「時間がないのに、どう深めればいいのか…」と悩むのも当然です。

だからこそ、まずは自分の軸=価値観の土台を固めることが大切です。
この記事では、薬学部ならではの経験から、あなた自身の軸を見つけるための視点と考え方をまとめました。

特定の設問のテクニックではなく、どんな業種にも通じる“ESのベース”をつくる内容です。
MRなど他学部と競う場面はもちろん、薬局・病院の就活にも役立ちます。

薬学で積み重ねてきた経験を、ただの“思い出”ではなくあなたの言葉と強みに変えていきましょう。

ESで重要なのは自分の軸|「あなたらしさ」が必要な理由

ESを書く際に、はじめにおこなっておきたいのが「自分の軸」を探すことです。
なぜなら、自分の軸がESを書く上での土台になるからです。

まずはその自分の軸の重要性について理解していきましょう。

就活で重要な自分の軸とは|あなたらしさと仕事の価値観

志望動機、自己PR、長所・短所にガクチカ——ESには沢山の項目があります。

それぞれ個別に考えなくてはならず大変ですが、一貫しておくべきことがあります。
それが就活における「自分の軸」であり「あなたらしさ」と呼べるものです。

各項目でこれがズレると、読み手側から人物像が浮かびにくくなります。

ESは、学生を面接に呼ぶかどうかを決める重要な書類ですから、
書類の上で人物像が想像できるように記載していく必要があります。

自分の軸で生まれる人物像|AI時代により重要なあなたらしさ

昨今AIの発達により、簡単に文章が作成できるようになっています。
就活における文章作成にも大いに利用すべきです。

しかし、注意すべきはAIはただ指示を投げても、あなたらしい文章は書いてくれません。

ネットや就活のハウツー本に記載されているような例文に近い、
誰にでも当てはまる文章にならないようにするためには、
適切に書いて欲しい情報を伝える必要があります。

そしてそのためには、まずは自分で自分の軸をしっかり言語化しておく事が必要なのです。

エントリーシートに必要な自分の軸|経験と価値観を分解する

では実際に自分の軸を考えるために、価値観を言葉にする方法を説明していきましょう。

ここでは、物事に直面した際にどういった切り口から物事をみるのか、
という認識の違いのことを「価値観」と呼称して考えていきます。

人によって異なる価値観|事例を基に価値観を考える

例えば、実務実習ではみなさんが行った調剤。

患者さんから受け取った処方箋の内容をみて、ピッキングを行う際に、
どんなことを考えていたか想像してみましょう。

▶処方の内容から、どんな患者なのか想像した?
▶効率的に集めるために、棚の配置を思い出して動く順序を考えた?
▶服薬指導するなら何を聞いて何を説明しようか、会話を想定した?

どうでしょうか?実習生として意識していることがあったはずです。
例として挙げた以外のことを考えていた学生さんもいるかもしれませんね。

実際に一緒に実習した2人の実習生に聞いた際には、
それぞれ意識していたことが違っていました。

価値観の違いを意識する|あなたらしさにつながるヒント

先の例は、薬剤師として仕事をしてるとどれも自然と意識するようになることではあるのですが、学生にとっての実習の経験と価値観を結びつける上では、もう少し分解して考える必要があります。

処方箋から調剤を行い、服薬指導を行うという一連の流れを要素で分けて考えてみます。

すると上記の例は、「構成する要素の内、どこに目を向けるのかが学生によって違った」
と言い換えることができそうです。

ここで強調したいのは、同じ経験をしていても、人によって考えることが違うということ。
これが価値観の違いです。

多くの学生は、就活で経験を掘り出すことに苦心しますが、
経験自体は大したものではなくてもよいと言われる理由は、ここにあります。

つまり、経験した内容そのものよりも、その経験で何を考えたのかが、あなたらしさであり、
採用の際に担当者が知りたい内容なのです。

就活で問われるのは「何をしたか」より「どう見て、どう考えたか」です。

まずは、自分がどんな場面で何を意識していたのか、
小さな気づきを思い出すところから始めましょう。

薬学部はガクチカ経験の宝庫|小さな経験でも十分に就活・ESは対応可能

ここまでは、一つの経験でもあなたらしさを見つけることができる、という話をしてきました。

ここからはさらに、どういった経験をネタにしていけばよいのか、そうした経験をどのように語ればよいのかという点を解説していきます。

薬学部の特別な経験|カリキュラムの範囲でも十分に価値がある

察しの良い方はすでにお分かりかと思いますが、薬学部ではカリキュラムの中で、
実務実習や研究室、国家試験の勉強など他の学部では見られない経験を沢山しています

特に実務実習は、プロの目線を半年かけて学ぶ非常に有用な期間です。

自分たちの勉強してきた内容と現場での実践内容を結びつけることができるため、
ただのアルバイトをするよりももっと深くその世界のことを認識できているはず。

就活においては、ガクチカはもちろん、志望動機や自己PRも、
経験をベースに語ることが多いため、語れる経験は多いに越したことはないのは事実。

そういう意味では、カリキュラムの中で順当に頑張った経験を話題にできるため、
他の学部の学生に比べて大きなアドバンテージであると捉えることができます。

経験を棚卸する|思い出レベルまで詳細に落とし込む

就活で語る経験というと、他の人とは違う珍しい経験を語るべきと勘違いしがちです。
これは平たく言えば格好つけてしまっているんですね。

実際には、ごく普通の経験で問題ないのです。

なぜなら、語る際には「実務実習」のように大きな内容ではなく、その中で起こった
ワンシーンを、情景・心情が分かるような形で切り取って語ることになるからです。

イメージは、友人や家族に「昨日あった出来事」を話すくらいの具体感。

事例を基にみてみましょう。

事例1:実務実習で「がん」の患者を担当した。がん治療薬の説明に同席した。

<情景・心情を語る>

医師からがんの診断について説明を受けた患者に、薬剤師から治療内容を説明する場に同席した。自分が亡くなることのショックよりも、遺される家族のことをしきりに心配していたのが印象的だった。(事象・経験)
がん治療は患者本人だけでなく、家族も含めてサポートしていかなければならないと感じた。家族の気持ちを考えると副作用が強くなく、効果のある薬を選びたいと思った(心情)

事例2:研究室内の実験で気づいたことがあった。

<情景・心情を語る>

PCRを使って、薬剤の遺伝子発現抑制効果を見る実験をしていた。ある時、結果を見てふと、薬剤を使っても発現したままの遺伝子について、タンパク質の発現状況を確認したところ、タンパク質は発現していないことに気づいた。薬剤の効果がなかったのではなく、転写を抑制していることに気づいた。(事象・経験)
一つの実験だけしているのではなく、色々な実験を組み合わせることで思っていたことと違う結果にむすびつくことがわかって、色々考えるのが楽しくなった。(心情)

いかがでしょうか?
上記の事例は、ポスター賞を獲ったなどの華々しい実績では決してありませんが、
その時の状況がよくわかるのではないでしょうか。

このくらいの具体性で経験を落とし込んで行くと、自分が当時どのように感じていたのか、
がわかりやすくなります。

経験と感情が結び付くと自分の価値観が見えやすくなるので、
事例として用いやすくなるのです。

では、薬局や病院のように同じようなバックグラウンドの学生と競争する場合はどうなのでしょうか。次章ではさらに、自分の軸をブラッシュアップする方法を解説します。

新卒就活で意識すべきポイント|他学生との差別化と訴求

前章では、薬学部の経験は他学部と比べて強みになるとお伝えしました。
ただし、薬局や病院を志望する場合、競争相手は同じ薬学部生です。

では、同じバックグラウンド同士で戦うとき、どう差をつければいいのか?
結論はシンプルです。

やることは大きく変わりません。

同じ経験でも、感じたこと・考えたことは一人ひとり違うからです。
ここからは、その“違い”をより鮮明に言葉にしていくための考え方を解説します。

あなたらしさを深める|行動原理を見つける

ここまでで「経験から価値観が生まれる」流れを整理しました。
次のステップは、あなたの行動原理を言葉にすることです。

行動原理とは、行動を選ぶとき、心の中で自然と働いている優先順位や考え方のことです。
ここを言語化できると、同じ薬学生同士でも人物像に深みが出ます

◆ 行動原理の見つけ方

まずは、以下の順で整理してみましょう。

  1. 経験を書き出す
  2. その時に心が動いた瞬間を思い出す
  3. 「なぜそう感じたのか?」を言語化する
  4. 実際にとった行動を書く
  5. 似たパターンをグループ化する

◆ 例

経験/シーン心が動いた理由行動行動原理の仮説
患者さんが不安そうだった本音を知りたいと思った先に質問内容を準備した不安の源を理解したい
棚が散らかり調剤が滞った非効率が気になる動線を整えた無駄をなくして正確にしたい
研究で結果が出ない“理由”を知りたい条件を1つずつ検証原因を掴むまで考えたい

こうして並べると、自分の中に一貫した考え方=行動原理が見えてきます。

◆ ポイント:出来事ではなく「行動」にフォーカス

多くの学生は、

・実習で○○を経験しました
・研究で頑張りました

というように、出来事の説明で止まりがちです。しかし、個性が表れるのは行動です。

行動の裏には必ず感情があり、感情の奥に“価値観”が隠れています。
だからこそ、「その時、どう動いた?」を掘ることが、あなたらしさに繋がるのです。

差別化は“行動の中身”で|無理に特別になる必要はない

ここまで整理できていれば、自然と差別化はできています。
大事なのは、「特別な経験」ではなく、“自分がどう動いたか”です。

新卒の就活では、能力差より“姿勢”が見られます。

企業は、新卒に専門的なスキルや成果を求めていません。
“入ってからどう成長するか”を見ています。

だから、

・特殊な経験を探す必要はない
・無理に“特別感”を演出しなくていい
・日常の中で選んだ行動が、すでに差別化ポイント

行動を丁寧に言葉にすることが、 結果として“あなたに仕事を任せたい”につながります。

訴求の仕方|企業のニーズと自分の軸を重ねる

訴求とは、相手の求めるものに自分の強みを結びつけて伝えることです。

企業は必ず、「こういう学生に来てほしい」という人物像を持っています。
そして、ホームページや募集要項にヒントが書かれています。

そこで、

  1. 企業の求める人物像を理解する
  2. 自分が持つ行動原理の中で、合う部分を選ぶ
  3. その行動原理を示す具体エピソードで語る

という順番で整理します。

無理に自分を作る必要はありません。
“合わせにいく”のではなく、“重なる部分を選ぶ”イメージです。

いくら探しても合う部分がないと感じるなら、それは縁がないということ。
無理に背伸びして入る場所ではありません。

以上、ここまでで、あなたの軸=行動原理を見つけ、それをエピソードで語る準備が整いました。

ここからは次の段階。見つけた軸を、読み手に伝わる“言葉の形”にしていくことです。

これができれば、あなたが見てきた景色や感じたことが、初対面の選考担当者にも伝わります。では実際に文章に落としていく準備を進めましょう。

エントリーシートのカギは具体化|ここまでのまとめと実際に書くための方法

これまで、薬学部の経験を“強み”として伝えるための考え方を整理してきました。
特別な実績や経験は必要ないということがお判りいただけたのではないでしょうか。

本記事のまとめ|あなたらしさがキーワード

まずはここまでの内容を整理してみましょう。

・ESは“あなたらしさ”を伝える書類
・経験そのものより、感じたことと行動が大事
・実務実習・研究・国試…薬学部は経験の宝庫
・思い出レベルに掘ると価値観が見える
・行動原理が言語化されると“人物像”が浮かぶ

これは他学部との差別化だけでなく、薬学生同士の中でも光るための視点です。

具体的に書くことを意識しよう|知らない人に興味を持たせるために

ここまででお伝えしたことを踏まえると、
自分のことを具体的に客観視できるようになると思います。

これがエントリーシートを書くためのベースになるのです。

エントリーシートを書く際には、その文章だけで読み手が容易にイメージできること、
そのくらい具体的に書くことが重要です。

では、エントリーシートを具体的に書くとはどういうことなのか。

次回の記事では、その詳細な方法について事例を用いて解説していきます。

>『Formulø』—それは次世代の薬剤師たちに向けた キャリアの処方箋

『Formulø』—それは次世代の薬剤師たちに向けた キャリアの処方箋

由来となったのは、薬学において処方のエッセンスを意味する『Formula』という言葉。 コロナ禍で急速に進んだオンライン化、AIをはじめ、日々進歩するテクノロジーの数々。社会全体が目まぐるしく変化する中で、薬剤師もまた、これまでと同じではいられない。 そんな時代だ。未来の薬剤師を目指す学生や若手薬剤師たちが、見えない将来に不安を感じるのも無理はない。 ーこれから薬剤師を目指すのは間違い?薬学部を目指すのはやめた方がいい? ー薬学部に入ったけど、この先どう進めばいい? ー薬剤師になったけど、将来に希望はあるのか? そんな不安な時代だからこそ、今こそ”処方箋”が必要だ。 『Formulø』は、そんなあなたの疑問に答えるメディア。 現場で働く薬剤師のリアルな声と、これからの薬剤師像を、一緒に見つけていかないか?

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