薬剤師に将来性はある?|2025年の終わりに読み解く給与と需要の行方

薬剤師には将来性がない——。
そんな言葉を、ネットやSNSで見かけたことはありませんか?

「このまま薬剤師を目指していて大丈夫なんだろうか……」
そんなふうに、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

たしかに、AIの進化や少子高齢化、社会保障のひっ迫など、
今の薬剤師像の延長線上で未来を描こうとすると、厳しい現実が見えてきます。

しかしその一方で、こうした不安や意見の中には、
根拠が曖昧だったり、主観的だったりするものも少なくありません。

そこで本記事では、「2025年問題」という節目を切り口に、
薬剤師を取り巻く社会環境や、制度・お金の面から“将来性”を読み解いていきます。

データをもとに現状を正しく理解することで、この記事を読み終えるころには、
今後どう進んでいくべきかが見えてくるはずです。

目次

薬剤師の将来性とは?|将来性をわかりやすく考えるための2つの軸

「薬剤師の将来性はあるのか?」
という問いに、明確な答えを持っている人は多くありません。

漠然と不安に思う一方で「でも医療職だし、なんとなく安定してそう…」
といった印象で語られることも少なくないでしょう。

そこでまずは「将来性」を、以下の2軸に分けて考えてみましょう。

・給与の安定性|これからも安定した収入が得られるのか?
・需要の安定性|社会から必要とされ続けるのか?

給与の安定性|これからも安定した収入が得られるのか?

「将来性」と聞いて、まず頭に浮かぶのは“収入の見通し”ではないでしょうか。

たとえば将来結婚して家庭を持ちたい、家を買いたい、子どもを育てたいと考えたとき、
「この仕事でやっていけるのか?」という金銭的な不安は切実です。

特に薬剤師のような“資格職”は「資格があれば稼げる」と思われがちです。

しかし、現実には年収が頭打ちになりやすい構造や、職場によって大きく差が出る仕組みがあります。

だからこそ、給与の動向や制度面も含めて、「この資格が今後も稼げる力を持つのか?」
という観点から考えることが重要なのです。

需要の安定性|社会から必要とされ続けるのか?

たとえ高収入の職業でも、その職業自体が将来的に縮小していくリスクがあれば、
“将来性がある”とは言えません。

ここで重要なのが「社会に必要とされ続けるか?」という視点です。

薬剤師に関して言えば、少子高齢化・AIの発展・医療費抑制政策などの要因により、
「今後もこの職業は必要とされるのか?」という問いが浮かびます。

需要が減れば雇用も減り、給与や待遇にも当然影響が出ます。
だからこそ、「薬剤師は今後も求められるのか?」という“職業そのものの存続性”も、
将来性を考える上で欠かせない軸
となるのです。

この記事では、以降この2つの軸に沿って将来性について解説していきます。

薬剤師は飽和している?|薬剤師の需要と数の現実

将来性の指標のひとつである「需要の安定性」を考えるうえで、薬剤師の今後の需要動向は無視できません。

ネット上では「薬剤師は余っている」「AIに取って代わられる」といった意見が見られますが、
それは本当なのでしょうか。

この章では、現在の需給バランスと、未来の飽和予測を簡潔に整理してみましょう。

2025年時点での需給バランス|患者数に対して薬剤師が不足している現実

薬剤師を取り巻く不安の中でも、特に注目されがちなのが「AIによる代替」と「人材の過剰供給」の2つです。

機械化に関しては、すでに現場では業務の一部が機械に置き換えられ始めています。

しかし一方で、薬剤師の数は依然として”多すぎる”わけではありません。

なぜなら、超高齢化により治療を必要とする患者数は2025年現在もなお増加し続けており、
薬剤師の手が足りない現場も少なくないからです。

そうした中では、むしろ「地域偏在」や「病院・薬局以外での供給不足(産業・教育・在宅等)」
の方が深刻であり、まだ薬剤師の人材活用の幅は広がっている途中なのです。

実際、厚生労働省のデータでも、処方箋の枚数は今後10年以上は増え続ける見込みであり、
少なくとも2025年現在では薬剤師は不足している状態です。

2040年以降の未来|「薬剤師余り」の時代がやってくる?

とはいえ、このような需要の高い状態がいつまでも続くわけではありません。

2040年以降人口は徐々に低下することが示唆されており、
それに応じて必要な薬剤師の数も徐々に減っていきます。

国としては、薬剤師を必要な仕事として位置づけているため、一定数の需要は残ります。
しかし、需要よりも供給が上回る状況になれば、椅子取りゲームのように競争ができるようになることでしょう。

AIなどの機械の発達もあり業務の在り方そのものが問われ始めている昨今、
業務の変化への対応ができなければ、”余る側”になってしまうかもしれません。

2040年問題や、将来的な人材飽和リスクについては、以下の記事でより詳しく解説しています。
興味のある方はぜひご覧ください▼
→2040年記事へ

次章では、2つ目の軸となる給与に関して重要な軸となる2025年問題について解説していきます。

薬剤師の給与と2025年問題|報酬に影響する社会の変化

「安定している」「給料が高い」と語られることの多い薬剤師の仕事。
しかし、こうした給与事情は、今後の社会構造の変化と無縁ではありません。

この章では、「給与の安定性」という将来性のもう一つの軸に迫る前提として、
最も本質的な転換点とされる「2025年問題」に焦点を当てて解説していきます。

2025年問題とは|後期高齢者と社会保険制度の転機

2025年は、日本の人口において最もボリュームのある「団塊の世代」が、
75歳以上の後期高齢者に突入する年です。

これは、日本の医療制度にとって極めて重要な意味を持ちます。
日本では「社会保険制度」によって、医療費の大部分がまかなわれています。

元々は「お金がないから医療が受けられない」といった事態を防ぐために、
皆で助け合い、必要な時に必要な医療を受けられるように設計された制度です。

しかし近年、この制度の財源が危機的状況にあることが指摘されています。
高齢化と医療需要の急増により、これまでの枠組みでは立ちゆかなくなる──。

こうした構造的な課題を象徴するのが、まさに「2025年問題」なのです。

2025年問題の本質|社会保険の支出が収入を上回る構造

社会保険の財源は、基本的に「労働者」が負担しています。

会社員であれば給与から自動的に天引きされ、
働いて得た収入の中から保険料を支払う仕組みになっています。

つまり、子どもや高齢者など「働いていない人」の医療費も、
現役世代が支えているという構造です。

ここで、後期高齢者が増えるということには、次の2つの意味があります:

・高齢者ほど慢性疾患を抱えやすく、医療需要が増加する
・75歳以上は「後期高齢者医療制度」により自己負担が1割で済む(保険の負担が重い)

この2点を踏まえると、支出が急激に増える一方で、支える側の労働人口は減少していく──
という、制度の“根っこ”からのバランス崩壊が見えてきます。

つまり、2025年問題の本質とは、
「最も人口の多い世代が後期高齢者になることにより、支出が収入を大きく上回ってしまう」ことにあるのです。

社会保険を維持するには?|2025年問題を踏まえて行われた様々な施策

こうした状況を背景に、国も社会保険制度を維持するために、
収入を増やす・支出を減らすという両側面から様々な対策を講じてきました。

たとえば、社会保険料率は徐々に上昇しており、収入の確保を図っています。
一方で、支出を抑えるために次のような施策も進められています:

・薬価の引き下げ
・診療報酬・調剤報酬の調整
・個人の負担割合の変更

こうした保険制度の変更に加えて、「患者側の選択」や「市販薬の活用」といった別の方向からも、
医療費抑制のための調整が行われています。

例えば2024年には、先発品を患者の意思で選択した場合、後発品との差額の一部を自己負担とする制度が盛り込まれました。簡単に言えば「先発品がいいなら、その分は自分で払ってね」という仕組みです。

また、スイッチOTCを拡充し、軽度な症状は市販薬で対応できる体制を整備する流れも進んでいます。
さらに直近では、鎮痛薬(湿布や保湿剤など)といった「OTC類似薬」を保険適用外とする方針も示されました。

こうした施策はすべて、「社会保険の支出削減」を目的としていますが、
いずれも根本的な解決には至っていないのが実情です。

“あの手この手”の対策にもかかわらず、制度を維持するにはあまりに負担が大きくなっている──
それが、2025年問題が突きつけている現実なのです。

薬剤師の平均年収は?|収入を決める制度の構造

では、いよいよ「薬剤師の給与事情」を見ていきましょう。
ここまで見てきた2025年問題と社会保険制度の現状が大きなポイントになります。

薬剤師の給与事情|他業種と比べたデータも公開

「薬剤師は安定している」——そんな言葉を、何度聞いたでしょうか。
しかしその“神話”は、いま静かに崩れつつあります。

2024年の厚生労働省の調査では、

・薬剤師の給与平均は役職込みで407千円(40万7千円/月)
・役職なしで390.3千円(39万300円/月)

となっています。

薬剤師の平均月収

平均月収平均年収(月収×12月)
役職者なし390,300円4,683,600円
役職者込み407,000円4,884,000円

出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査(令和6年)」| 政府統計の総合窓口より作成

単純に12か月で考えると、役職者込みでの平均給与額が約488万円です。

対して、同じく2024年の国税庁のデータによると、
全業種を含めた国民の平均給与(賞与込み)は年収478万円。

引用:令和6年分 民間給与実態統計調査|国税庁

つまり役職者を含めても薬剤師の給与は、国民全体の平均とほぼ変わらないことがわかります。

また、役職者込みと役職者なしでの平均給与にほぼ差がないことから見て、
役職がつくことで急激に給与が上がるわけでもないことがなんとなくお判りいただけると思います。

(※厳密には、役職に就いた薬剤師の中には年収が大きく上がるケースもありますが、
役職者の母数が少ないため、全体の平均額には反映されにくい構造です。)

なぜ努力しても給料が上がらないのか?|薬局の売上構造を読み解く

では薬剤師の給料はなぜ上がらなくなってきているのでしょうか。
その理由は、薬局の売上が立ちにくくなっているからです。

薬局収入の主力である「保険調剤」の仕組みを見てみましょう。

保険調剤では、処方箋1枚ごとに報酬が発生する仕組みになっており、
薬局の売上は以下の式でおおまかに表せます。

処方箋単価(円/枚)×処方箋枚数(枚)=売上(円)

薬局がコンビニの数より多いという昨今、薬局ごとの差別化は難しく、集客は難しい状況。

処方箋枚数はほぼ門前病院の出す処方箋枚数に依存します。
つまり、薬局側が努力で変えられる余地が非常に少ないということです。

そして処方箋の値段は、調剤報酬によって決まっています。
年々、加算を得るためのハードルが上がってきており、単価が上がりにくい構造に変わってきています。

また、薬価の引き下げによって、薬価差益(薬を買った原価と売った売値の差のこと。)もなくなってきています。

このように、薬局の売上がそもそも立ちづらい状態になってきているので、給料も上がりにくいのです。

処方箋40枚ルールの壁|あなたの実力が給与に反映されにくい理由

薬局の売上にはもう一つの壁があります。
それが、処方箋40枚につき1人の薬剤師を配置しなければならないというルール。

引用:薬局並びに店舗販売業及び配置販売業の業務を行う体制を定める省令(昭和39年02月03日厚生省令第3号)

つまり、薬剤師1人あたりが1日で対応できる処方箋の上限が「40枚」までに制限されているということです。
※年間の平均なので、超える日があるだけなら問題はありません。

例えば年間の平均が1日あたり45枚ならどうでしょうか?
薬剤師を2人配置して1人22~23枚を対応することになります。

パターン処方箋枚数薬剤師人数単純な人件費売上差分
A40枚1人1人分
B45枚2人2人分+5枚分のみ

この場合、Bでは処方箋が5枚増えただけなのに、薬剤師を1人追加する必要があるため、
人件費が大幅に増えてしまいます。

また、個々の薬剤師によってスキルや能力にも当然差があります。
スピードだけで比べてはいけませんが、それでも効率的に捌けるかどうかで対応できる枚数が変わるのも事実。

仮に、機械化によって効率化を図り、通常の倍の処方箋を捌ける薬剤師がいたとしても、
ルール上その能力を活かすことはできません。

人件費(支出)を抑えて利益を高めるのも、それによって優秀な薬剤師にフィーをつけるというのも、
薬局の経営判断としては難しいということですね。

以上、薬局の売上と薬剤師の年収について解説しました。少し複雑な話ではありますが、
なぜ薬剤師の給料が伸びにくいのか、その背景が見えてきたのではないでしょうか。

最後となる次の章では、それを踏まえた上での薬剤師の将来性について立ち返って考えてみます。

薬剤師の将来性と生き方|専門性を持つ意味と活かし方

ここまで現状のデータと臨床現場での経験を基に解説をしてきました。

この記事のテーマは薬剤師の「将来性」。
最後にそこに立ち返って一つの受け止め方をお伝えします。

将来性の有無|ここまでの定義を基に確認する

冒頭では、将来性を「給与の安定性」と「需要の安定性」の2軸で考えましょう、とお話ししました。

ここまで解説してきたように、給与は安定しているどころか、むしろ上がりにくい構造になっています。

さらに今後の薬剤師数の増加に対して人件費総額が抑制されることを考えれば、
給与水準はますます下がっていく可能性があります。

また、将来的には需要も少なくなることがデータから示唆されています。

つまり、この2つの軸で考えると、薬剤師には将来性が「ない」と言い切れてしまいます。


見方を変えれば将来性は十分にある|資格と専門性の活かし方

ただしこれは、将来性の定義を「給与の安定性×需要の安定性」に限定した場合の話です。

一方で、薬剤師という職業は医療インフラに関わる仕事であり、
急速に社会のトレンドに左右されるものではありません。

動画制作やSNS運用といった、時代の流れの中で爆発的に生まれた仕事は、
華やかで注目を集める一方で、ツールの変化や技術革新によって一気に廃れてしまう可能性もあります。

それに比べ、薬剤師を含む医療職は、形は変われども人が生きる限り需要が消えません。

AIなどの技術が一部の業務を代替する可能性はありますが、
「薬剤師」という仕事そのものがすぐに消えるわけではなく、むしろ一定数は必要とされ続けると考えられます。

つまり、競争に勝ち残り、役割やポジションを確立できた人にとっては、むしろ将来性があると言えるでしょう。

さらに、薬剤師という資格・専門性は「医療現場で働く」以外にも活かし方があります。

例えば、企業、行政、教育、マーケティング、出版など、医療と関係のある他領域に軸足を移せば、
保険制度の制約を受けない新たな価値の生み出し方が可能になります。

このように、柔軟な選択肢を取りやすく、他分野でもアイデンティティを確立しやすいという特性を持つことは、
薬剤師の「もう一つの将来性」だと考えることができるのです。

以上、将来性というテーマで解説してきました。
最後にこの記事の内容を以下にまとめておきます。

まとめ|薬剤師の将来性をめぐる4つの核心ポイント

① 給与の将来性は厳しい:制度的な上限と調整の歴史

  • 薬剤師の給与は、診療報酬という国の財源で賄われており、制度的に売上や給与が上がりにくい構造になっている。
  • 特に近年は「薬剤師の報酬比率」が引き下げられ、20年間ほぼ横ばいの給与水準が続いている。

② 2025年問題は「財源」の問題であり、薬剤師の評価に直結する

  • 2025年には団塊の世代が75歳を超え、医療・介護費の爆増によって社会保障財源の限界が可視化される。
  • これにより診療報酬が引き下げられたり、医療職種間のリソース配分が再編されたりする可能性が高く、薬剤師の価値が再評価される局面が来る。

③ 「給与×需要」の両面から見れば、将来性は確かに厳しい

  • 2040年には高齢者人口がピークを迎え、以降は医療需要そのものが減少へ向かうとされている。
  • 一方で薬剤師数は増え続けており、「人件費の取り合い」や「過剰供給」による雇用環境の悪化が予測される。

④ 将来性は“仕事”にあるのではなく、“人”に宿る

  • 自動化・AI・タスクシフトの進行により、画一的な働き方では価値を生み出しづらくなっている。
  • 医療の専門職としての軸を持ちながら、自分のスキルや視点をどう社会に接続するか?という「個の時代」が始まっている。

この記事では2025年問題と薬剤師の給与の構造に焦点を当て、将来性を考えました。

続く以下の記事で2040年問題と薬剤師の需要に関して詳しく解説しているので、
併せて読んでさらに理解を深めて行きましょう▼

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この記事を書いた人

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