【薬局】実習生に服薬指導をどう任せる?|実習指導のゴールと考え方

薬局実習の指導薬剤師にとって、実習生に服薬指導をどう任せていくか?は
正解がない問題です。

「不安にならないようにしっかり事前に練習をさせたい」

「とにかく数をこなして慣れさせるしかない」

このように指導者によってそれぞれの考え方もあり、関わらせ方もまちまちですが、
実はこれが実習生の不満を生む原因になることも少なくありません。

この記事では、実習指導のやり方に悩む指導者に向けて、実習生の実習への満足感を高めつつ、
しっかり学びに繋がるような服薬指導の任せ方をテーマに解説していきます。

この記事はこんな指導者に向けて書いています:

・実習指導が初めてでどんなことに気を付ければよいか知りたい
・実習生から不満が出ているがどう対応していいかわからない
・そもそもどんなことに不満を感じるのかがわからない

目次

服薬指導は実習生にとって一大イベント|不満の一番の原因になることも

服薬指導は薬局実習の項目の中でも、患者さんに直に触れ合う機会です。

学生にとって期待が大きい反面、実習に対する不満の原因になりやすいものでもあります。
学生の目線を分解してみましょう。

服薬指導やりたい学生は多い|服薬指導件数が学生にとってのステータス

服薬指導は、薬局業務の中でも学生が最も経験したいと感じている業務です。

それまで机上で薬の知識を蓄えてきた学生にとって、実習は現場を体験できるイベント。

中でも最も薬剤師らしさを感じられる服薬指導は多くの学生が「やってみたい」と感じています。

また、自然と仲間内でも服薬指導の件数が話題になります。

友人がすでに始めている話を聞いていたり、件数を比べたりすることで、
「自分は遅れているかも」と焦る薬学生も多いもの。

服薬指導の件数は薬学生にとってステータスの一つになることを知っておくと良いでしょう。

服薬指導はやってみたいけど怖い|緊張で踏み出せない学生も少なくない

服薬指導をやってみたいと感じている一方で、いざやってみようとすると、
緊張してなかなか踏み出せない学生も少なくありません。

特にまじめな学生ほど「間違えないようにしなきゃ」という気持ちから、
力が入りすぎてしまう一面もあります。

指導薬剤師の皆さんは重々ご承知の通り、服薬指導は慣れでしかありません。

そのため、踏み出す際には間違えても問題ないこと、
しっかりフォローアップを行うことを伝えて背中を押しましょう。

また、指導薬剤師からの心無いひと言で自信を喪失してしまう学生もいます。
指導者から見れば知識が足りない、勉強不足だと感じることも多いでしょう。
しかし、それをストレートに伝えてしまうのは指導者としては言語道断。

一度自信喪失してしまうと、主体性が極端に失われてしまうこともあります。
学生は服薬指導を怖がっていることを理解し、自信をいかに持たせるかを意識しましょう。

服薬指導で期待が外れると不満に繋がる|学生が実習に不満を持つ理由

これらの学生の気持ちを総合した上で、気持ちを上手く汲めていないと
不満に繋がりやすいことも覚えておきましょう。

・ピッキングや練習ばかりで、いつまでたっても本番が始められない
・服薬指導は何件か対応しただけで、十分に対応させてもらえない
・少し言い淀んでいただけで指導薬剤師に引き取られてしまった

こうした不満は、私が学生時代の頃も学生を指導する立場になっても、よく聞く内容です。

もちろん、すべて学生の期待に沿う必要はありませんし、顔色を伺ってもいけません。
指導者にはそれぞれの考えもあるはずです。

しかし一方で、こうした不満をよく理解した上で、ある程度未完成の状態だとしても送り出すことも必要です。

薬局実習の服薬指導はいつから始めさせる?|最適なスケジュールは?

学生の不満の原因がわかったところで、では実際に服薬指導はいつ頃から始めさせるのが一番よいのでしょうか。

画一的な正解はない問いではありますが、一つのケースとして参考にお伝えします。

開始時期として多いのは2~6週目|実習に慣れてきたころから始める

多くの薬局では、2~6週目の間に始めることが多いようです。特に周りの意見を聞いてみると、
実習開始から1か月ほどが経過する5~6週目は始めやすい時期と認識されている事が多いです。

しかし、指導者の考え方によっては、
1週目からどんどん対応させて、とにかく早く慣れさせる、というケースや
逆に、前半は知識を磨いて後半は服薬指導に集中させる、というケースもよく聞きます。

私が対応していた薬局では、店舗でよくある症例を例にしたロールプレイを3週目から開始し、
実習生の意欲と慣れ、薬局の混雑状況などを鑑みて3~5週目の間に本番に出るようにしていました。

3週目から服薬指導を始めると充実感が高まる?|満足度の高い実習にするには

3週目から開始していたのには、いくつか理由があります。

一つ目は「慣れ」の問題。実習生にとって実習先に来ること自体が緊張するものです。
特に一週目は雰囲気も読めないものですし、失敗しないように気を使い続けています。

実際に1週目は倒れるように寝た、という学生もいました。

先にも書いた通り、服薬指導は学生にとって踏み出すのが怖いものでもあります。
そのため、フォローする指導者への信頼感を培っておくことが服薬指導に踏み出す自信に繋がると考えています。

二つ目に、知識の問題。
学生はCBTで広く学習してきますが、薬局によって取り扱う薬の種類は大きくことなります。

そのため、実習の初期は調剤を通して、まずは薬局でよく出る処方の内容をよくみておくこと、
そして自分なりに知識を深める時間を確保しておくことが、服薬指導にも繋がっていきます。

三つ目の理由は学生の主体性に起因します。
つまり、やってみたいと感じる学生が多いのが3週目あたりだということです。

服薬指導に踏み出すには勇気が要る反面、興味がありつつ、
友人が先に始めている噂などを聞いて焦りが出始めるのもこの時期です。

そのためこの時期を目途に、まずはロールプレイから始めると、スムーズに導入できるのです。

実際に今まで関わってきた学生は皆、満足感を持って実習できた様子だったので、
このやり方は一つのモデルケースとして利用できると考えています。

もし始め方に悩んでいる指導者の方は参考にしてみてください。

以下の記事は服薬指導がいつから始められるのか不安に思っている学生に向けた記事です。

指導者にとっては、実習生の不安に寄り添いながらスケジュールを考えるヒントになります。
是非目を通してみましょう▼


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服薬指導の件数や開始時期|見誤らないように注意する

学生の気持ちを踏まえた上で、服薬指導を始めるスケジュールについて解説してきましたが、
注意しておきたい点があります。

それは、学生の気持ちよりも優先すべきことです。
この章ではそんな注意すべき点についてお伝えします。

服薬指導の開始時期は学生と相談しておく|見えないことが不満に繋がる

服薬指導の開始時期については、指導者の考え方によるところが大きく、
特に学生の習熟度が低いと感じられる場合などに開始が遅れるケースがあります。

知識があまりに不足している場合や説明の仕方に不安がある場合など、
ロールプレイを行って練習することは有効です。

しかし、本番に出る前に完璧を目指してしまうと、いつまでも踏み出せない状況に陥ってしまいます。

実習の後半まで開始されない場合は、
中間面談の際などに学生から大学に不満が伝えられるケースもあります。

もし、意味があって後半まで開始を控えている場合は、
スケジュールについて学生と事前によく相談しておくようにしましょう。

件数を増やすことに固執しない|患者はレベル上げの道具ではない。

もっとも注意しておきたいのは、件数を増やすことに固執しないようにすることです。

学生は周りと常に比較して遅れを取らないようにしたいと考えています。
服薬指導に当たっては、件数を重ねたがる学生も少なからず見受けられます。

もちろん自主的に意欲を見せることは素晴らしいことです。

実習ですから、「もっとやりたい、挑戦したい」という気持ちは、
基本的には後押ししてあげる方が良いのは確かです。

一方で、患者は決してレベル上げのための道具ではありません。

すでに簡単にできてしまう対応を、ただ件数を重ねるためだけに行うのは、
指導者として推奨できることではありません。

やるのであれば、学びを得られるものを十分に行うこと。
この意識を指導者も欠かさないようにしておきましょう。

服薬指導を学びに繋げるための方法論|ハードル設定と2つの指導法

前章では、服薬指導は学びを得られるように指導することが重要だと説明しました。
これは言い換えると実習生に対しては「学び」を軸にした指導を行っていく必要があるということでもあります。

では、学生が1件1件の服薬指導を学びに繋げるために、指導者はどんなことを意識すべきなのでしょうか。
この章では指導の基本となるポイントについて解説します。

段階的なハードル設定|ゴールを感じさせないことで主体的に動かす

指導の上でまず必要になるのがハードル設定です。

まじめな学生ほどできないことには慎重になるものですが、
簡単に超えられてしまうほど低いハードルでは学びがありません。

そのため、なるべく緊張感を持って臨み、
上手くいかなさを実感させられる案件を担当させることを意識しましょう。

はじめての時は緊張していても、同じような処方を何回か担当していくと、
徐々に慣れてきて、よどみなく説明ができるようになります。

そうなれば次のフェーズ。少し難しい処方に挑戦させるようにします。

自分ができるようになったと感じると、慢心を生むことにも繋がります。
逆に、少しずつハードルを上げていくと主体的に挑戦ができるようになります。

フィードバックと反省のコーチング|服薬指導よりもその後の指導が重要

もう一つ重要になるのが服薬指導の後です。
指導者の腕の見せ所でもあり、むしろ服薬指導の経験そのものより重要かもしれません。

服薬指導の後には必ずフィードバックを行いましょう。
患者への指導内容(知識面)と服薬指導の方法(説明面)の2つの観点から、気になった点を伝えます。

また、この時にコーチングを行うことを意識しましょう。
ほとんどの実習生は自分を客観視することが出来ません。

しかし、学びは反省点を言語化してこそ深まります。

注意点として、フィードバックしようと指導者が語りすぎると、
実習生が聞くことに徹して、反省しなくなってしまいます。

そのため、なるべく実習生自身に、服薬指導の自己評価を語らせるようにしましょう。

なかなか発言が出てこない場合には、フィードバックを絡めて質問するなども有効です。
継続していくと実習生の自己評価の質も上がっていき、成長が見て取れるようになります。

実習の服薬指導のゴール地点|課題目線と服薬情報提供書

さて、実習で服薬指導を経験する目的はどこにあるのでしょうか。

最終的な目的がズレていると、目先の作業に囚われるようになってしまい、
せっかくの実習で得られるはずの学びが得られないことにもなり得ます。

そこでこの章では、実習における服薬指導の目的について解説します。

服薬指導の上達が目的?|実習はあくまでも体験の場

服薬指導を重ねていくと、学生はもっと上達したいと感じるようになります。
これは実習で良い体験ができている証拠でもあります。

指導者としても、学生が上達できるようにフォローすること自体は間違いではありません。

しかし、実習はあくまでも体験を通して学びを深めるための機会です。

服薬指導そのものを身につけることが目的なのではなく、服薬指導という体験を通して、
患者の課題を見つけ出し、その解決のために何ができるかを考える姿勢を身につける。

それこそが、実習で服薬指導を行う本来の目的です。

その目的が達成できていれば、仮に服薬指導自体が上手くいかなかったとしても、本質的な問題ではないのです。

課題を言語化する経験|学びを形にする一つの到達点

服薬指導の中で見つけた患者の課題を、言語化し整理する経験も、
学びを深める上で非常に有効です。

例えば、服薬情報提供書の作成はその一つの形です。

課題の発見から、伝えるべき内容の整理、文章化までを行う過程は、
学生にとって大きな負荷がかかる一方で、思考を一段引き上げる経験にもなります。

すべての実習で必須なわけではありませんが、
機会があれば挑戦させる価値は十分にあるでしょう。

実習は思考を一段引き上げるための期間|修士課程との比較で意義を考える

実習は薬学部の5年生の約半年間を費やして行います。
これには非常に大きな意味があると考えるべきでしょう。

他の学部の方と比較すると、この学年は修士課程1年目や社会人1年目に相当します。

もともと4年制だった薬学部では、4年の学士課程を卒業後、薬局に1年目として勤務し、
薬剤師としてのキャリアをスタートさせたはず。

薬局薬剤師として業務を覚え、ただこなせるようになるだけであれば、
わざわざ追加で2年の時間を費やす必要はありません。

他方、修士課程は、学士課程を卒業後に博士課程の前段階として行う課程です。
研究者としての能力を高め形にする博士課程に比して、その前段階の修士課程は、
研究のやり方を知り、研究活動を通して「考える力」を養うための期間なのです。

薬学5年生も同様に、実習を通してより実践的な視点から「考える力」を養う期間であるといえます。

実際に社会に出る前に、時間をかけて、プロの伴走を受けながら思考を鍛える。

指導者としては、実習をそのための機会と捉え、
実習生の思考を一段引き上げるために指導に当たりましょう。

まとめ|服薬指導は学びの宝庫

以上、実習生に服薬指導を行わせるに当たっての考え方について解説してきました。
この記事の内容を整理すると以下の通りです。

・実習生にとって服薬指導は「やりたい×怖い」両面を持つ重要イベントであり、満足にも不満にもなる
・服薬指導の開始時期や件数は正解があるわけではなく、完璧を求めすぎず段階的に任せることが重要
・件数をこなすことや上手く説明することを目的にせず、「患者の課題を捉えること」を軸に指導する
・学びを深めるためには、適切なハードル設定と、フィードバック+自己評価を促すコーチングが不可欠
・実習の本質は業務習得ではなく「考える力」を養うことにあり、指導者はその視点で関わる必要がある

ここまで解説した通り、実習は薬学生にとって大きな成長の機会となる重要なイベントです。
反面、実習の内容によって成長度合いも学生の満足度も大きく変わってきます。

学生が実習をチャンスにできるかどうか。

それは指導者であるあなたの腕にかかっているということを忘れないようにしましょう。

以下の記事では、実習が失敗するとどうなるのか?が分かります。

学生にとっての実習の「ハズレ」がどんな薬局で、そうならないためにはどうすればよいのか?
指導者として自分が「ハズレ」薬局にならないために。学生の理解を深めてください▼

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